西梅田地域にそびえたつゲートタワービルはいまや大阪名物になっている。ゲートタワービルの建設計画は、道路や鉄道など公共交通機関の敷設計画では行政の思惑が絡んでくる。というより、国土交通省や地方自治体がそれなりの役割を果たさなければ実現できない。それゆえ、行政と一体となってきた小西のような存在が重宝されてきたともいえる。ゲートタワービルにおける高速道路のルートと同様、もちろん阪急の延伸プロジェクトには大阪市も噛んでいました。土地再開発に行政が関係しなければ、計画に信用力がなくなり、うまくいかないからです。当時、このあたりの地価相場は1坪当たり300万円程度でした。それを大阪市がいったん800万円で買い取る、という形で土地を取りまとめていこうとしたのです。その実際の地上げを五社興産が担う。そういう仕組みです。形の上で行政が噛んでいると、再開発事業という大義名分も立つ。なおかつ小西さんのようなとりまとめ役が後ろ控えていれば、妙なところからクレームも付かない。そして私たち三和銀行はと言えば、阪急とゼネコン、五社興産との間の調整役です。そうしてプロジェクトが進められていきました。


だがしょせんはバブル期に立案された計画である。計画主体の企業が、急激な景気の悪化により経営難に見舞われてしまう。「とりわけひどかったのが、工事を受注した中堅ゼネコンの森組でした。借り入れ返済が滞り、事実上、倒産。阪急グループに吸収合併されてしまいました。それで、計画が頓挫してしまうのです。もっとも小西らがプロジェクトのために設立した五社興産だけは生き残る。それどころか計画が頓挫した後も存在し、様々な大阪の開発案件で暗躍するようになるのである。この五社興産をはじめ、小西邦彦たちが行った事業の多くは、三和銀行は強力な支援態勢を敷いていた。もっぱら三和の裏部隊、プロジェクト開発室が、不動産の開発計画を次々と立てる。そのプロジェクト開発室のまた裏で地上げ業者のライトプランニングが奔走し、そこに小西の関係会社が一枚噛む。そんな仕組みが出来上がっていく。
片福連絡線の建設をめぐり、関西高速鉄道が国土利用計画法の届け出をせずに用地を買収していた問題で、大阪市職員らを接待していた不動産業者「ライトプランニング」(大阪市)が同鉄道に土地を売った際、三和銀行がライト社の代理として売買交渉にあたっていたことが27日、関係者の話でわかった。三和銀行は、ライト社が問題の土地を取得した際にも、リース会社から融資を仲介していたという。三和銀行は大阪市、大阪府などとともに同鉄道への出資者。三和側は、ライト社と同鉄道の土地取引に関与したことを認めている。
関西高速鉄道が、新たな路線の建設を計画したのが、始まりだ。関西高速鉄道は、大阪市や大阪府など四自治体とJR西日本が組んで設立した会社で、ここに三和銀行も出資した。というより、建設計画の主導権を握ったのが三和である。これもまた、プロジェクト開発室案件だ。そうすいて大阪のJR京橋駅と兵庫の尼崎駅を結ぶ片福連絡線という路線の建設が進んだ。12.3キロにわたる新線は、建設費3300億円をかけた一大プロジェクトで、関西経済復活の起爆剤として期待を担う。その片福路線は鉄道用地を確保する費用だけで、実に500億円を見込んでいた。ところが、この建設費用が予定より膨らんでいく。問題は路線用地の取得費用だった。この地上げの任を担ったのが、ライトプランニングだったのである。
片福連絡線はいわゆる地下鉄プロジェクトだ。そのため、日本鉄道建設公団があらかじめ地上権設定の契約を地主と結んでいた。鉄建公団はもともと田中角栄が新幹線や本州四国連絡橋などの鉄道敷設のために作った特殊法人だ。やがてそれが都市部の民鉄敷設をも担うようになる。本来こうしたケースは第三セクターの地下鉄新線の建設のため、路線の頭上の地上権を買えば良い。当初は、そういう計画でスタートした。1990年、まず鉄建公団が地上権設定の契約を下の地主と結び、買収金額の半額に当たる2億8000万円を手付金として支払っている。その後、地上権の契約が用地取得の任を担うことになったライトプランニングに引き継がれた。つまり倍の5億6000万円で、ライトプランニングが地主および鉄道公団から地上権を買えば済む話だ。しかし、そこからが問題だった。
用地確保から半年後の91年3月、当のライトプランニングが計画とは異なる行動に出る。地上権とは別に、改めて地主から土地そのものを購入した。つまり自ら地主になったわけだ。驚いたことに、そうしておいて、鉄道運営会社の関西高速鉄道に土地の買い取りを要求したのである。ライトプランニングは、この土地は35億円で同鉄道に転売するのである。ライトプランニングは一連のと取引で、転売差益を稼いだ。だが、ことはそれだけではない。国土法違反の疑いはもちろん、関西高速鉄道にそれだけ損害を与えたことになりはしないか。となると、背任の疑いも出てくる。ライトプランニングが地主から土地を購入した際、三和がその融資まで面倒を見ている事実が発覚する。三和が仲介し、ナショナルリースが融資。貸し付け原資は、三和から出ている迂回融資だったのである。こうして三和銀行、ナショナルリース、ライトプランニングのトライアングルによる不可解な工作が明るみに出る。そしてついに、大阪府警がこのトライアングルにメスを入れようとしたのだ。すると、またも飛鳥会の小西邦彦の出番となる。
「明日、お前のところの行員が、藤原のところに持っていかれるで。気ぃつけや。」 日曜日の朝、小西から岡野の自宅へ電話がかかってくる。「大阪府警の防犯部に藤原班という特捜部ができ、60人態勢で捜査に当たっていると聞きました。小西さんはそうした警察情報にはものすごく強い。それで心配して私のところへ電話してくるのです。まさしく三和の関係者は逮捕寸前まで行きました。捜査が山場を迎え、銀行の調査役が出がけにパトカーに乗せられた、府警本部へ連れて行かれた聞きました。なのに『銀行は弁護士もつけてへん』と小西さんはカンカンになって怒っていました。代わって小西さんの弁護士が警察と対応しているようでもありました。まさに事件になる寸前だった。ところがそこで唐突に大阪府警特捜本部のキャップが富田林署の所長として転出してしまったのです。これほどの大事件で小西の影響力が府警に及んだとは考えづらいが、確かに捜査はそこで中断された。報道も沙汰やみになり、これも事件としてはうやむやに終わっている。
銀行の裏切り
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「昔は100キロくらいあった体重が67キロぐらいしかなかったのと違うやろか。」
「岡野、ワシはそんなに悪やろうか。警察の調書を見ると、銀行の連中はみなワシに脅されて、仕方のう取引をした、言うとるんや」
【日本の国家権力】
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