自治体財政と基地
基地を抱える地方自治体は米軍の持つ税法上の特権によって税制上の様々な制約を受けている。米軍は日本国内で「保有し、使用し、または移転する財産」について租税その他類似の公課を賦課されない。また米軍人、軍属およびその家族は「米軍や軍の付属施設等から受ける所得」について日本の課税権者に対し租税納付義務を負わず、「一時的に日本国にあることのみに基づいて日本国に所在する有体又は無体の動産の保有、使用、これらの者相互間の移転、死亡による移転」について日本国の租税を免除される。「関税法臨時特例法」、「所得税法臨時特例法」、「地方税法臨時特例法」等が制定され、課税当局に対し、米軍について一定の場合に非課税扱いとする法的根拠を与えている。この免税特権のため米軍基地を抱える地方自治体は、地方税法に基づいて賦課できるはずの固定資産税、都市計画税、市町村民税、事業税、不動産取得税、料理飲食税等いろいろな地方財政の収入源を失う結果となった。


昭和49年10月31日、横須賀市の住民5名が市監査委員に対し、「米海軍基地内に4棟、長井住宅地区内に5棟、米軍人個人が所有する建物が存在するが、この建物に課税権者たる市長が固定資産税を賦課しないのは法律上の根拠無く免税特権を認めるもので違法である」と主張し、監査委員な文書を米海軍横須賀基地司令官ディートリッヒ大佐に送り基地立ち入りを求めたが、当該建物は課税対象にならないとの理由で拒否された。監査委員は建物の実在を確認できなくとも他の情報から青森県三沢市の米空軍基地に所在する通称トレーラーハウスと同様の個人所得建物が存在することは間違いない、と推定して監査を実施した。自治省税務局固定資産税課税課長の三沢氏に対する回答は「課税できる」というものであり、この解釈gん剤も行政実例となっているが、この点に関する米軍側の見解は三沢個人所有建物は用地の使用、維持、売却、所有者の適格性、強制撤去等米国法により厳しく規制されており、地位協定4条1項・2項に基づく米国財産と同様に扱われるべきものであるから、固定資産税の課税対象にならないというもので自治省の解釈を全面的に否定しており、三沢市でも固定資産税を賦課できない実情にある。
基地の提供 
国有地を提供する場合、国有財産法によれば、国有地は「普通財産」と「行政財産」とに分類され、これによって提供の手続きが異なる。普通財産である国有地は大蔵大臣の管理・処分権によって貸し付けることができる。しかし貸付け等の処分に当たっては、一方では国の利益を保持し、他方においてはこれを取り扱う職員や当該処分によって利益を受ける第三者の不当な利得を防止するため厳しい制限が設けられている。しかし、国有財産管理米軍特例法は、在日米軍のために、次のような特例を設けている。第一に米軍には無償で貸し付けることができる。第二に貸付期間は米軍が「その用に供する間」となっている。第三に国は当該財産の返還にあたり、合衆国に対し、原状回復又はこれに代わる補償の請求を行わない旨定める。
関東複雑空域 横田アプローチ・コントロールの問題
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関東上空の進入管制区の配置を見ると、横田、羽田、成田、百里の各空域が西から東へ並び、うち羽田、成田、百里が重なり合い、重なり合った部分が高度によって分けられていることがわかる。ここは米軍管轄の横田空域と、自衛隊管轄の百里空域の両軍空域に挟まれた形の羽田空域と成田開港に伴って成田空域が不自然に割り込んで再編された空域で本来単純なものでなければならない進入管制区が、高度差などで空域を分割された分かりにくいものとなってしまっている。羽田空港は外国便のほとんどの発着を成田に譲った後も国内線の増便などで過密な状態が続いており、とりわけスペンサー(羽田への侵入機のゲートとして設けられたポイント)付近のニアミス、コンフリクションが多発している。ところが羽田の西に広がる横田空域はガラガラにすいた状態なのである。無論、横田空域は米軍専用のWエリアなどとは異なり、民間航空機に全く閉ざされているわけではない。現に横田空域内を航行する航空機の65%が民間機、残り35%が軍用機という統計もある。
米軍と民事裁判
国家の民事裁判権免除の問題については国家権力の持つ内在的な原理から古くは絶対免除主義を取る国が支配的であった。絶対免除主義はその国が裁判を受けることに同意した場合や、不動産の権利に関する裁判を不動産所在国で行う場合の外は、他の国家に裁判権は及ばない、という。しかし、国家による商業活動が活発化し、他国と私人の関わりが増すにつれて絶対免除主義では不都合が生じ次第に制限免除主義を取る国が増加してきた。制限免除主義は、「自国が契約上の義務履行地の場合」や「労務供給地の場合」のように裁判権行使の基準を設けて、免除を一定の場合に制限し、他国を自国の裁判権に服せしめようとするものである。今ではほとんどの国がその内容に差はあるとしても、制限免除主義を取り始めており、絶対言免除主義を取っている国は社会主義国を除くと日本だけではないか、と言われている。しかし、その社会主義国も具体的行動では制限免除主義に向かう傾向を見せているという。

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