文学少年な彼氏の名台詞
山崎豊子の沈まぬ太陽くらいは、常識として読んで損は無いと思うよ
ドーン、おっしゃるとおりですね。
思わず絶句して下を向いてしまいました。
読みます読みます。読みました。御巣鷹山編だけですけど・・・。
多少ネタバレ、かつ、かなり気持ち悪い描写を抜き出してみましたので、お食事中の方も読まないことをお勧め
いたします。
テープは偶然にも異常事態が発生したと思われる爆発音から、はじまっていた。期待後部で起ったやや金属音の
混ざった音は、全長七十メートルのジャンボ機の胴体を伝わり、操縦室内のマイクに、なんとも形容しがたい響きを
もって収録されていた。また、事故機を操縦していたのは副操縦士で、機長は隣で教官役をつとめていたことが
明らかになっていた。
44分22秒 機長「いっぱいやったか?」
        副操縦士「いっぱい、舵、いっぱいです」
45分46秒 機長「NAL123、アンコントローラブル」
46分33秒 機長「これは、だめかもわからんね」
恩地は志方の方を向いた。「機長がアンコトロールと叫んだ後、『これは、だめかもわからんね』と云うとことが
あったでしょう、あんな淋しい、人間の絶望の声を聞くのは、はじめてです

「遺体収容は直ちにやめろ!誰がこのようなことを許可したのか」サイドレン調査官が厳しい口調で詰った。
「遺体収容は警察の職権であり、事故調としても異論はありません。」日頃は温厚な藤波調査官が、
大男のサイドレンに向かってきっぱりと答えた。
「日本の調査委員会はクレージーだ。事故原因究明には、現場の保存が第一だ」
「お言葉ですが、ミスター・サイドレン、日本は仏教の国です。遺体を放っておいて、その横で調査などできない。」
「だが、犠牲者は神に召され、ここに残っているのはボディだ、今や事故原因の究明が、最優先だ」
サイドレンは譲ろうとしなかった。
「お国にも、郷に入れば郷に従えという諺があるでしょう。日本人は死者を単なるボディとは考えない、これは
宗教の違いです。」藤波も流暢ではないながらも、英語で、一歩も引かず国民性の違いを説いた。
山の上の事故現場で思わぬ宗教論争が起り、気まずい雰囲気が漂った。
藤岡市民体育館には、国民航空が、航空機用の大型クーラーを設置し、温度は下がったが死臭が充満している。
遺体の検視は4日目を迎え、運び込まれてくる遺体は、殆んど人間の形を留めているものがなく、頭部、胴体、
手足などの部分遺体が多くなって来た。また、腐敗が進み、蛆虫が発生して、遺体を縞のように多い、足などは白
いソックスをはいているようにびっしりと張りついている
。医師二名、看護婦三名、検死の警察官五名のチームでまず
蛆殺しからはじめる。缶入りの白い液をかけ、ゴム手袋をはめた手で蛆を払い落とす。それでもとれない時は、箒で
払い落としてから、医師が遺体に刺さっている鉄片などを取り除く。すると、そこからまたわっと蛆が這い出す。人間の
脂を吸い、黄色く肥った二センチもの蛆もいる。
忽ちポリバケツ一杯になり、看護婦が入れ替わり立ち代り、体育館の外の下水へ捨てると、溝蓋の目が詰まって、
スコップでかき出さねばならぬほどであった
。ようやく、蛆を取り除いても、検視用のシートの上には、離断して、どの
部分か解らぬ肉の塊や、ビニール袋に入った臓器、黒焦げの炭化した遺体ばかりが並び、医師たちはあまりの酷さ
と哀れさに胸を衝かれた。

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