人々はランダムを信じない
チャートや罫線の有効性が実証分析で否定されるにもかかわらず、これらが一向に廃れないのはなぜであろうか?その理由は多くの人が「ランダム」ということを信じようとしないことにある。人間は誰でも、ランダムなデータを見たとき、そこに何らかのパタンがあるという心理的な錯覚に陥りやすいのである。実際コンピュータが乱数を用いて描いた「でたらめなグラフ」を見せると多くの人はそこに何らかの規則性を発見するのだそうだ。雲や天井のしみを見ていると、そこに人の顔や動物のイメージが浮かんでくるようなものであろう。罫線やチャートが生き残るのもこれと同じ理由による。

じゃ、もう一個、同じ事例を。カジノにおいて、バカラやルーレットは、勝負や出目の履歴を表示したり書きとめたりする紙が置いてあるのも、これと同じ理由による。

予測するのは真のエコノミストで無い証拠
新聞や雑誌には「有力エコノミストの為替レート予測」といった記事がしばしば登場している。しかし、為替市場が効率的であれば効した予測はナンセンスなのだ。「為替レートの予測を行うのは、その人が真のエコノミストではないことの証明だ」といってもよい。私は20年近く前に、こうした内容を雑誌記事に書いたことがある。ところが、それに対して当時の経済学会の重鎮から抗議が寄せられた。その人は、為替レートを予測する計量経済モデルを開発していたのである。私の記事は、そのモデルの批判を目的としたものではなかったのだが、結果的にはそうなってしまった。重鎮は自分の仕事が「無意味」とされたことに怒ったのだろうか、「経済学を学ぶものの心構え」といったお説教が長々と書かれてあった。私は論理的な反論ではなく倫理的な抗議が来たこと、そして、アメリカでは常識となりつつあった効率的市場仮説が日本では知られていないようであることに、ショックを受けた。いまでは計量モデルで為替レートを予測しようなどと試みる学者はさすがにいない。
一般に相関係数が負の値となる場合を、「逆相関」という。例えば、自動車産業のような輸出産業の株価は為替レートが円安になった時上昇する傾向があるのに対して、食品加工産業のような輸入産業の株価は為替レートが円高になったときに上昇する傾向がある。したがってこれらの株価は逆相関になることが多い。

本当に計算しました? 同一セクターは相関が高いなどと安定した結果が出るほどの期間で計算するならば、株価同士で逆相関は観測するのがかなり稀なはずですが・・・。