20世紀で最も進んでいる学問 聖書学
聖書学という学問があり、これは聖書考古学、聖書史学、聖書文献学、聖書語学、聖書釈義学という5つの分野に分けられる。聖書学はヨーロッパでも新しい学問で、1905年にダイスマンという古典学者が西洋古典学の方法を聖書の研究に持ち込んだのがはじまりといわれる。それ以来、今日では、20世紀で最も進んでいる学問は原子物理学と聖書学であるといわれるほどに発達した。
考古学が裏付ける聖書の記述
聖書に書かれていることは、ほとんどが神話で、たとえ史実によるとしても、粉飾されていると考える人も多いだろう。この問題に考古学者が発掘という実証的方法で取り組んだのは19世紀からで今日までに、着々とその成果が積み重ねられている。遺跡の発見や発掘の結果、これまで史実として疑問視されていた聖書の記述の、歴史的信憑性が証明された例は少なくない。だが、この逆、すなわちその記述が歴史的には事実でなく何らかの原因譚説話であることが明らかになった例もある。また直接ではないが、聖書の伝承がある事実を基にして形成されたことが明らかにされた例もある。その典型的なものは1929年にサー・レナード・ウーリイによって行われた大洪水の発掘である。彼は粘土層によって3500年前の大洪水を確認した。シュメール人やヘブライ人の洪水の話のもとになっている現実の大洪水があったこと、この発見はもちろん、2つの話のうちの、どちらの個々の事柄をも証明しない。もちろんこの大洪水は全世界的ではなく、チグリス・ユーフラテス川の下流の河谷に限られ、およそ長さ600km、幅150kmにわたる局所的な大災害だった。しかし河谷の住民にとっては、それは全世界と同じであった。
天文学と聖書の記述との関係
神話・伝説的な物語は新約聖書にもある。たとえば、イエス誕生を告げた有名なベツレヘムの星。この星についても、天文学者たちは架空のことではなく、事実であるという結論に達した。1603年のクリスマスの少し前、徹夜の観測で、土星と木星の異常接近がまるで1個の大きな星のようになることを発見したのは、ヨハンネス・ケプラーである。その後、天文学者たちの計算の結果、紀元前7年に、この土星と木星の以上接近が3度にわたって起きていることが発見された。大きな「一つの星」の度重なる出現に、バビロニアの学者たちが驚き、はるばるパレスチナへ旅し、エルサレムにヘロデ王を訪ねたとしても不思議ではない。星は彼らにとって占星術的に何か大きな予兆であり、同時にイスラエルでは「ヤコブから1つの星が出、イスラエルから一本の杖が起こり・・・」(民数記24章17節)という記述以来、救済者の出現の予兆と考えられていた。またヘロデ王が紀元前37年から4年までの間、在位したことは、歴史的な事実である。「イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東から来た博士たちがエルサレムに着いていった。『ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私たちは東のほうでその星を見たので、その方を拝みに来ました・・・』」(マタイ福音書2章1~2節) マタイによる福音書は、こう書いている。ベツレヘムの星が紀元前7年に土星と木星の異常接近によって生じた大きな「一つの星」であることは、いまではほぼ間違いないとされている