まもなく革命によって解体されようとしていたフランス社会の古臭い構成において、僧族および貴族の二特権身分と、特権は持たないが、財政的、職業的には重要なブルジョワジー-イギリスの中産階級にあたる-とは、勤労者の表面を覆う薄皮にすぎなかった。概数でいって50万の二特権身分と100万のブルジョワに対して2500万の勤労者がおり、その9/10は農民であった。しかし少数の大都市、パリは人口約60万で、6つばかりの海港や工業中心地は各10万に近かった。多くの地方都市とでもいえるものでは、大寺院のお偉方たち、教区の僧侶たち、地方自治体の役人たち、司法官、弁護士、その他民生機構および宗政機構のすべての小役人たちは、自己の立場を維持する以上のことを望んでいた。
アラスはそんな地方都市の1つであり、ロベスピエール家はそんな家の1つであった。この一家はこの地方に300年来住んでおり、もしマクシミリアンがその性格のうちに何か外国風なところを遺伝していた、彼はしばしばアイルランド系だと告発された、としてもそれはずっと遠い祖先から来たものに違いなかった。