三木「次の会長は君に頼みたいんだよ」
五月女「え、こんなところで突然、言われましても・・・」
三木「わが社の状態は君が一番わかっているはずだ。誠実な君なら社員の信頼もある。ぜひお願いしたいんだ」
五月女「新社長はどうするんですか」
三木「野澤君に頼んであるんだ。この話はまだ、私と行平会長しか知らない。よろしく頼みますよ。」
三木はその直前に野澤にも電話を入れていた。
三木「僕の後任は君がやってくれないか。いろいろあって君しかいないんだ」
野澤「えーっ!私はその器じゃありませんよ」。そういう野澤の答えの中に、僥倖の喜びがにじみでている。行平も野澤に電話を入れていた。じっとり粘るような口調であった。
行平「頼むな。逃げないで仕事に向かってくれ。いろいろあるんだよ」
二人のトップが言う「いろいろ」とは、緊急副社長会で明らかにされた「指三本」の簿外債務のことだったのだろうが、野澤が深く聞くことは無かった。本心をめったに口にしない三木が、側近にポツリと漏らした。
三木「野澤が社長になっちゃったよ
「取引で儲ければ自分の才覚、損をすれば証券会社のせいだ」。苦情客の中にはそう考えるものもいる。
> いつの時代もいるねぇ。でもそうである限り、証券業のブローカレッジビジネスはなくならねぇな。