大統領の弟はロビイスト
ジミー・カーター元大統領の現職時代、実弟のビリー・カーターが、こともあろうにリビア政府のロビイストとして雇われている事実が暴露された事件を思い出す。リビアはテロリスト支援国として、アメリカと敵対関係にあった。ジョージア州で、ガソリンスタンドを経営していたビリー・カーターが、リビアから石油輸入促進の仲介料として1980年に22万ドルを受け取っていたことが事件発覚のきっかけとなった。産油国であるリビア政府は、石油の買い手を探しており、米大統領の弟をロビイストを雇うことによって、敵対国への売り込みを図ったのであった。
レーガン前政権が「ロビイスト政権」と酷評されていたことは、日本にはあまり伝わっていない。それは2期8年と政権が長期化したことにも一因としている。政権中枢の逸材が大挙して野に下り、ロビイストに転身し、古巣のホワイトハウスとのコネを売り物に商売大繁盛といった、元政府高官ロビイストの黄金時代を築き上げた。ロビイスト業界の御三家とは、「元政府高官」「元議員」「弁護士」である。レーガン政権とのコネクションが武器だけに、一時はレーガン人気に便乗して飛ぶ鳥を落とす勢いだった。しかし一歩間違えると政府倫理法に触れることになる。政府倫理法とは、政府高官が公職を退いてから1年以内に、古巣の同僚などとその職場と利害関係の生じる討議を行うことを禁止した法律である。官庁と天下り先の癒着関係を回避するのがそもそもの目的である。
アメリカ市民が所有している鉄砲類の数は6000万丁を超え、このままだと2000年までに1億丁に達するとの予測すら存在する。毎年1万人以上殺し続ける拳銃の野放し状態が、今まで一向に解決の目処が立たなかったのはなぜか。その答えは全米ライフル協会(NRA)と製造業者の、猛烈な鉄砲類規制反対ロビイングの成果である。1968年は、マーチン・ルーサー・キング牧師、続いてロバート・ケネディ大統領候補が相次いで暗殺された年である。前年の1967年には、全米の州議会や地方議会合計で100以上の銃砲取締法案が上程されていた。アメリカにとって拳銃規制問題は古くて新しい、最大の国内シングル・イシューの典型である。アメリカには日本人には理解しにくい”フロンティア精神”とか銃砲保持の慣習が建国以前から存在していた。したがって、武器所有の権利は、憲法修正第2条で保証されているのである。この憲法の条文をタテに、幾回となく規制法案は葬り去られてきた。