私は公立中学校に通っていたのですが、同じ中学の一個上に、T川先輩という人がいました。私もT川先輩も吹奏楽部に所属しており、T川先輩は部活の先輩、いわゆる絶対服従の上下関係でした。T川先輩は卒業後もたびたびOBとして中学校にいらっしゃいましたが、私が卒業後は会ったことはありません。中学校の上下関係は卒業後も変わらない絶対的なものなので、地元に帰った時に、運悪く駅とかで遭遇したら、公衆の面前で、「T川先輩、お久しぶりです!」で90度の角度で頭下げて、2秒以上静止。この年で、そこまでやりたくないけど、無意識にやっちゃうだろうなぁ。
私は中学2年生で154cmしかないチビだったこともあり、T川先輩は体も大きく、頭も良くて、楽器もうまい。私の同級生がT川先輩の家の隣に住んでいたのですが、T川先輩の邸宅は、友人の家の6倍くらいの面積で、実家も金持ち。
あれ? 何か雰囲気違う? そうだよ、俺がありがちなヤンキー武勇伝語ると思った?
T川先輩は生徒会長でもあらせられ、楽器はオーボエで、100万円弱するオーボエを個人で持っていて、個人レッスンも受けているようなお嬢様。お嬢様=バカお嬢様と思っているなら大きな勘違いで、T川先輩はバカが付かない真性のお嬢様。吹奏楽部の三役は、部長、副部長、学指揮で、順序もその通りなのですが、T川先輩は不思議なことに部長ではなく、学指揮の立場に甘んじていました。その理由は、三役は3年生が卒部される時に、次の学年の執行役を決める制度だったので、私の2個上の先輩方が「T川に部長なんかやらせたら、一人で全部仕切ってしまい他の役に意味が無くなるから、音楽の世界に閉じ込めておかないと危険だ。」という背景があったのです。