工業化 ゆきすぎた政府保護と国内市場育成の不足
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発展途上国の近代化には工業化が不可欠である。工業化はインドのように独自の社会主義型社会の建設を目指し、重化学工業部門を公営化して資本財の国内生産を増加し、他の分野に対する投資を拡大する貿易非依存型の循環が測られる場合も、ブラジルやメキシコのように消費財の輸入代替からしだいに重化学部門、資本財などの生産部門の工業化に着手し、輸出振興に映るように発展的になされる場合もある。しかし工業化が帰って累積債務を生み、国内の経済発展を阻害していることも多く、その要因には輸出用農産物の場合と共通のものがある。
輸入代替工業にしろ輸出振興工業にしろ、国を興すための工業化には金融・財政・税制上の優遇・保護措置がとられるのが普通である。そのような政府主導の公営企業は、ややもすれば非効率に陥り、時期を見計らって徐々に民営化し、外国製品と競争させるなどの措置を取らなければ製品の品質向上はおぼつかず、経営と製品の両面で国際競争力を欠くことになる。1982年に外資の導入で大幅に改善されつつあるものの、かつては注文してから手に入れるまで年月を要し、旧態依然たるモデルを生産していたインドの自動車産業などはその典型である。