六本木クラブ襲撃事件のターゲットは被害者とは別
キム兄弟とは、関東連合が対立していた”敵”の中でも、最も激しく敵対していたグループの頭だ。本名をKというが、私たちはその頭文字をなぞって、符牒のように”キム兄弟”と呼んでいた。キム兄弟は、山口組極心連合会系の暴力団組織に所属していた弟(その後、破門)の方がワルとして有名だ。喧嘩、しかも武器を使うような派手な喧嘩なら私たちも人のことは言えなかったが、もっと別の意味合いで悪いというのがキム弟に対する印象だ。強盗や知人への恐喝は数知れず、それでいて規則に縛られる暴走族のような組織に属するわけでもなく、好き放題やって都合が悪くなれば雲隠れする。呼び出しにも応じないし、関東連合と対立しながらも正面から向ってくるようなこともなかった。だからキム弟が暴力団に所属したという話を聞いたときは意外に感じたものだ。
関東連合のことを「暴力団にならずにマフィア化した組織」などと大袈裟に言うジャーナリストがいる。だが、どこの世界に抗争相手を人が集まるクラブの中で、しかも金属バットで撲殺するマフィアがいるだろうか。そもそも関東連合はマフィアなどという大それたものではない。「フラワー(六本木クラブ)」の事件を知った海外のマフィアが、日本のマフィアだかギャングだかの抗争で使われた道具がピストルやナイフではなく金属バットだったと聞いて呆れたという。ある意味では、平和な日本ならではの事件とも言える。今世間で言われる関東連合は、すでに暴走族では無く、かといってまっとうな社会人にもならず、そのまま歓楽街に溶け込んだ不良少年達が成人し、愚連隊と化したものである