シンガポールはリークアンユー率いるPAP(People’s Action Party=人民行動党)政権が、1959年の部分自治政府の成立以来、マレーシア連邦への参加と分離を経て1965年のシンガポール共和国成立後、現在に至るまで50年以上にわたって一元的支配を貫徹していることで知られる。一元的支配の貫徹は、住民一人一人の多様な日常生活を標準化するという形で結実し、その細部にまで入り込んでいる。このことを端的に示すのが公共住宅団地で、人口の82%がHDB(Housing and Development Board=住宅開発庁)という政府機関の下にある団地に居住している。シンガポールは「総団地化」を実現した団地社会であると言える。