オランダによる植民地支配の後、15~16世紀以降の歴史書は数多いが、それ以前の歴史というのはほとんど触れられることがない。700ページにも及ぶ、その日本語訳文献という貴重な資料を手に入れたので読んでみた。
第1章 最古のヒンドゥー諸王国(1~6世紀)
インドネシア群島の歴史はヒンドゥー人の渡来をもって開幕する。ヒンドゥー・ジャワ期はほぼ15世紀まで、この間に高度の文化の達成、国家の組織化と商業の発展が見られ、この群島がヨーロッパ人の視野に入り始める当時の姿を形成するに至る。ヒンドゥー文化の影響をよく認識しようとするならば、この文化が浸透したと見られる地域とそうではなかったと想像される地域、すなわち、ジャワ、スマトラおよびバリとこれら以外の諸島を比較してみることである。この群島において既に有史以前に観取しうる現象、即ち文化の流れは一定の方向に向かったのであって、この群島世界の全体に流通したのではなかったことは、ヒンドゥー文化の場合一層明瞭である。