保身のための融資
92年早春、大阪の料亭の女将が日本興業銀行から2400億円もの巨額融資を引き出した東洋信金架空預金証書偽造事件、1支店の渉外課長が総額7000億円という資金を独断でバブル企業に流した富士銀行不正融資事件、そして住友銀行と密接だった大阪の中堅商社が暴力団関係者をも巻き込んで不明朗な地上げや絵画取引を行ったイトマン事件・・・。前年から金融機関を舞台とする大型犯罪が、バブルのウミのように相次いで噴出していた。そんなある日、拓銀本店内の一室で海道弘司常務と佐藤安彦副頭取が向き合った。海道が佐藤に打ち明けた。「実はすぐに数百億を融資しないとカブトデコムの経営は持ちません」。佐藤にとっては衝撃の告白だった。
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