興銀を手玉に取った尾上縫
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「北浜の大物相場師」「謎の料亭女将」「バブルの女帝」。あぶくのような好景気の中で暗躍した怪人物は数多いが、女性はそうはいない。なかでも尾上は、稀有な存在だった。大阪みなみの千日前で料亭「恵川」を経営する傍ら、一日に数百億円の株式投資を繰り返してきた女相場師である。逮捕後、彼女は一躍時の人になった。尾上の奇怪な行動は、今も語り草になっている。彼女は「恵川」の隣にもう1つ「大黒や」という料理屋を経営していた。「大黒や」の中庭には、不動明王や弘法大師の石像、灯籠などがところ狭しと並んでいた。特に珍しいのは、その中央で睨みを利かせていた大きなガマガエルの石像である。彼女は毎日、このガマガエルを拝み、株の相場を張った。やがて尾上は、優良銘柄を事前に的中させる女祈祷師と、北浜の証券マンの間で評判になる。しかも1度に20億円、30億円と投資をする。大物相場師の相場に乗り遅れまいと、証券マンたちが「大黒や」へ日参し、彼女とともにガマガエルを拝んだ。