国家の品格の藤原正彦の本なのだが、最近読んだ本の中で最もくだらない本であった。途中で読むのをやめようかと思うほどに。国家の品格は読んだことが無いが、今後読むことはないであろう。抜き出した文章もほとんどが著者のセリフではないのが残念だ。
今度6年生の長男が2泊の修学旅行へ行くことになって、出発2週間前に細菌検査ということで検便をさせられる。5日前からは朝夕に体温、脈拍を測ったうえ、食事量や睡眠時間、便通などについて記録させられる。そして出発前日には医師による健康診断まで行われるのである。最近とみに学校活動において、本来は本人または親の責任帰すべき健康に、学校が神経を尖らすようになった。家族旅行の際に検便をする人も、水泳の度に体温を測る人も、白衣に白キャップで料理する主婦もまずいない。まさかの事故が起きた時の訴訟対策と思われる。学校がこれほど訴訟を恐れるのは、不可抗力や本人の過失で起きた事故であるにもかかわらず、管理不行き届きとの理由で訴えられる、ということが重なったからである。
なんでもかんでもお国まかせという日本人の気質の反映だよ。それは一人で文句を言っても、一朝一夕には、変わらない。「東南アジアはなぜ年中暑いんだ!」と気候に文句を言っているのと同じ。
訴訟先進国のアメリカでは、誰かが雪道を滑って転ぶと、管理不十分ということで前の家が訴えられるらしい。法律や契約に違反した場合の訴訟は当然だが、本質的に自己責任あるいは確率論的不運にすぎぬものを他人に責任を転嫁し金銭をせびりとる、という風潮がアメリカを蝕んでいる。アメリカが訴訟社会となった主因は、多民族国家としての組成にあろう。風俗、習慣、言語、宗教、価値観などを異にする人々をまとめ、統一国家を運営するには、全ての民族に共通の何かが必要である。それが論理だった。だから余りかでは教育のあらゆる段階で、論理的思考が最も強調されている。論理は確かに有用だが人間をすべてそれで律しようとすると、人と人との間隙が冷却し、必然的に訴訟が多発する。そのうえたいていの考えや行為は、論理的というだけでよいなら正当化しうるから、なお始末が悪い。
タイ語でなぜ?はタンマイ?と言うらしいがニュアンスとして苦情、「なんでなんだっ!(怒)」があるようである。日本語の「なぜ?」も若干怒りの要素を含み、私は穏やかに「なんで?」と聞くことがあるが、確かにそれは若干の脅しの意味を含むことが多い。一方、英語のWhy?は言い方次第ではあるが、Whyそのものに怒りのニュアンスはないであろう。このようにアジア文化圏は、論理的思考や理由を追求することを拒絶している文化圏なのである。であるから経済合理性の追求や資本の論理も忌み嫌われ、「50%以上の株を握ればこの会社は俺のもの」という発言に反発してしまう”お国柄”なのである。
母が窮地に陥った時の常套句 「38度線を越えて、3人の子供達を無事に連れ帰ったのは誰ですか?」 水戸黄門の印籠よろしく、父はこの切り札を聞くや書斎へ退散したような気がする。一緒に南下する機会があり、母も父に取りすがってそれを請うたが、満州気象台に部下を残したまま家族と脱出することを父は拒否した。公を私に優先したのだ。そのおかげで母子四名は文字通り死線をさまようことになった。満州へ渡ったのももぱら父の止む得ぬ事情だった。
玄関で父が「今日は銀座へ行く」と母に言う。うれしさをひかえようとしてか、仏頂面で言う。これで飲むので帰宅が遅くなるという宣言であり、軍資金の請求でもある。母が「まったくあんな所のどこがいいんでしょ」と皮肉をこめて言いながら、一万円札を何枚か手渡す。父が帰宅するや否や「臭いですね」「不潔ですからすぐに汗を洗い流してください」「今日も大金を貢いできましたか」などと嫌味を連発した。「一晩で五万円も払えば誰でももてます。私は5円安い豆腐を買いに1キロ先まで行ってます。」と言って、父をすごい目でにらんだ。
ブラックジャックに絞るのは、ルーレット等のゲームが、長時間し続ける限り、確率論的に負けるようにできているのに反し、これだけは戦略次第で勝つチャンスがあるからである。黒の礼服を着た目つきの鋭いディーラーとさしで勝負する感じもなかなかスリリングである。
この人数学者として本当に大丈夫かな? サシ勝負で勝つ戦略、何を言うのか聞いてみたいわ。ハハハ。
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女房はおかんむりだった小さなテレビをどこかにこっそりおけば良いものを無断で大型を購入し居間に置いたのは私の美的感覚の欠如であり、田舎者ぶりを表していると言った。確かに私の田舎ではテレビは食堂か居間に置くもので、それを中心に団欒することになっていた。女房はどの家庭でも居間の中心にテレビを据えるから知的会話と言うものが日本で育たないのだという。
私の母も同じことを言っていた。「田舎の家はテレビが立派だ。他の娯楽と教養が無いからだ。」と嘲笑していた。ちなみに一族家では私が中学生になるまでテレビが無く、それ以降も食卓から見えるところに置かれることはなかった。
欧州統合による弊害としてあげたのは、雲助タクシーや犯罪の増加だった。特に自動車泥棒が急増したという。東欧からの出稼ぎ泥棒が路上から、あるいはガレージの鍵をこじ開け車を盗み、国境検問所が無いことを良いことに、はるばる自国まで運転し売りさばく。欧州統合およびそれによる国際化をルシアンは是認している。様々な障害はあっても、欧州の平和に役立つし、経済的にアメリカや日本に対抗する唯一の道とも言う。

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