May 10 2011 東電:代表取締役の報酬返上、常務は60%削減-リストラ策の一環
【記者:岡田雄至、広川高史】
  5月10日(ブルームバーグ):東京電力は10日、「資金面で早晩立ち行かなくなる」ことから福
島第一原子力発電所事故の損害賠償を実施するために政府に支援を要請した。その一環として、
清水正孝社長は10日、社長や会長などを含む8人の代表取締役が報酬を当分の間、全額返上す
るほか常務取締役9人についても60%削減することを表明した。
  清水氏は、現時点では一般従業員の報酬の追加削減はないとしたが、今後組合との協議のう
えでさらなる削減を実施する可能性があると語った。報酬削減は当初、役員が50%、管理職が
25%、一般従業員が20%
だったが、福島第一原子力発電所事故の損害賠償が莫大な額になる
と見込まれる中で、政府から一層の削減を求める声が上がっていた。
  清水社長が10日、首相官邸で枝野幸男官房長官と海江田万里経済産業相に手渡した要望書
は、「今年度は社債・借入金合わせて約7500億円の償還・返済が予定されていることなどから、
資金面で早晩立ち行かなくなり、被害を受けられた皆さまへの公正かつ迅速な補償に影響を与え
る恐れがある」と指摘。追加の燃料費も今期1兆円になる見通しで、代表取締役の報酬全額返上
を余儀なくされた形だ。
  清水氏は報酬以外の資産売却などの合理化策について、「今日時点では政府には出していな
い。聖域なき合理化ということで現在取りまとめている。しかるべき時にきちんと公表する」と述べ、
時期は未定だが、2011年3月期の決算発表時に合わせて明らかにしたいとの意向を示した。
人員削減については「これからの検討課題だ」と述べるにとどめた。
  海江田経産相は要望書を受け取った後に会見し、複数の要望項目について、今晩にも修正を
求める考えを示した。海江田氏は「国の支援も財政負担ということであれば最小化しないといけな
い。こういう点を何項目かに絞って東電に打ち返す」と語った。

さて、記事上では、話題の東電に初めて触れるが、世論を煽ることを意識しつつ、もう少し詳細に触れてみよう。
まず、役員報酬だが、19人で、7億だから、一人当たり平均3674万円となる。ちょっとうらやましい?
少し役員を弁護してあげると、推定では、手取りだと2000万円くらいになってしまうだろう。ちょっと気が済んだ?
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この役員報酬が100%給与型で、賞与もストックオプション制度もないのが、いかにもお役所商売な制度と思える
が、柏崎以前は、賞与もあったというのが、実態だ。
で次に同一業界の従業員平均給与を眺めてみることにしよう。実は、東京電力の給料は・・・、沖縄電力の次である。
震災前、去年の有価証券報告書であるが、既にこの順序なのである。
PowerCompare.png
これもおそらく柏崎の後の厳罰的な給与カットが原因だと思われる。だが、東京電力本社は新橋にあり、その通勤可能
範囲に住むことを思えば、東電社員は既に他・地方電力会社に比べて、圧倒的に家賃に対する可処分所得の割合
が低く、体感的にかなり地味な生活を強いられていることであろう。一方で、地方の電力会社、、特においしいと思われ
るのが九州・東北・北海道電力で、土地・家賃を考慮した場合、地元ではかなりな好待遇企業
としての存在であろう。
地震以前から思っていたのだが、この横並び給与体系は、通常の民間会社の経営思想から言えば、明らかに不自然
である。給料を100万カットした時の営業利益の改善度合いを%で示してみたが、やはり東北・九州は高めである。
また類似業界のガスは、電力よりも100万ほど少ないイメージで分布している事を鑑み、「けしからん」という声もあがる
かもしれない。
記事にあるように一般従業員の減額を20%とすると、金額で一人当たり150万円、全体で700-800億円の削減
にはなる。営業利益、フリーキャッシュフローは、大体毎年数千億円オーダーであるから、確かに若干の助けにはなる印象
だ。現在の株主としては、従業員の給料は、関心を抱くほどの大きさではないということが明らかになった。
株主と関係が薄そうだからニュートラルに疑問が起こってきた。なんで従業員の給料下げろって世論になるんだ?
電気料金と供給電力量について言及するならわかるが。感情論で言っても、東京においては、うらやましがられるほどの
高給取りじゃないと思うのよ。地方電力会社がうらやましがられているだろうから、東電の減給問題は、地方電力会社
高給取りによる風評被害?

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